シリーズ・日本ワインが生まれるところ。山形『ベルウッドヴィンヤード』にインタビュー!

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材で紹介。Vol.15は、山形県上山市『ベルウッドヴィンヤード』。「世界観をまるごと、美味しいワインに込めて。手紙のように、飲む人に届けたい」。その想いとは?

いま最も注目されている銘醸地、山形県から届く"手紙のような"ワイン。栽培・醸造を手がけるのは、鈴木(=ベルウッド)さん。

その美味しさとスタイリッシュな世界観で、またたく間に人気ワイナリーの仲間入りを果たした『ベルウッドヴィンヤード』。代表を務める鈴木智晃(すずきともあき)さんがワイナリーをオープンさせたのは、山形県上山(かみのやま)市。老舗の『タケダワイナリー』や人気の『ウッディファーム&ワイナリー』などがある蔵王山麓(ざおうさんろく)の町で、ブドウをはじめとする果実栽培やワインの生産がさかんなエリアです。この地で、ほぼ一人で栽培から醸造までを手がけている鈴木さんが、自らの名を冠したワイナリーを設立するまでのストーリーと、その想いを聞きました。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

「私は山形県、朝日町の生まれです。20歳の時にご縁があって、地元の『朝日町ワイン』に就職をしました。朝日町はブドウ栽培がさかんで、『朝日町ワイン』は第三セクター方式で運営されている観光ワイナリー。そこで足掛け19年間、ワインの醸造とブドウ栽培を学びました(鈴木さん)」。意外にも、鈴木さんがワイナリーに入ったのは消極的な理由だったといいます。「実は、あんまり格好いい話ではないんですが(笑)。実は就職が決まっていなかった20歳ごろ、親がたまたま見かけたワイナリーの求人に勝手に履歴書を出したんです。それでじゃあ話を聞いてみようかな、って入社したような感じなんです」。偶然出会ったワイン造りですが、鈴木さんにとって、運命的な出会いとなったようです。「勤務をはじめてから15年くらいは、ほぼ醸造をメインで担当していました。でもそのうち、せっかく物造りに携わっているのだから、よりよいものを造りたいな、と思うようになってきて。"よいワインはよいブドウから"と言われるように、栽培を知らなければ(よいブドウを造らなければ)よいワイン造りはできない、と考えるようになり、栽培にも興味を持ち始めました。ワイナリーには自社畑もあったので、それからは栽培にも積極的に関わるようになり、そうしていくうちに"自分で畑を持ちたい、自分の手が回る範囲の小さなワイナリーをやりたい"と、思うようになり,理想の土地を捜し始めました(鈴木さん)」。大きなワイナリーを離れ、小さな、自分だけの世界観を表現できるヴィニュロンへ。そんな鈴木さんの決意が伺えます。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

39歳の時に上山市で新規就農。3年の準備期間を経て、2020年に自ワイナリーが完成!

上山市での新規就農を決めた鈴木さん。醸造の経験を積んだ、39歳の時の決断でした。「よいワインを造るためのよいブドウ栽培を始めるにあたって、いろいろな土地を探しました。ただ実際にワイナリーを目指すとなると、やはり個人が簡単に始めるのはなかなか難しいものがあり…。農業を始めることすら難しい状況だと感じていたときに、ちょうど上山市で"ワインの郷プロジェクト"が発足。ワインを通して地域を活性化させようという取り組みが始まり、新規ワイナリーの誘致を支援する動きがありました。上山市は、気候風土が果樹栽培に合っていて良いブドウができるのは知っていたのですが、理想とする土地がなかな見つからなかったので、上山市の担当者に相談。ここがいいな、という場所(久保手)を伝えたら、ちょうど土地があるということで、理想に近い土地を紹介していただき、その日のうちに久保手でやることを決断しました。自園は蔵王連峰が一望できる、のどかな風景が広がるところ。高台のような場所にあるので、空が近い印象というか開けた感というか…。空気感もとても気にいっています。景色がとてもいいんです。こうして久保手でブドウ栽培を始めて委託醸造も手がけ、独立して3年目の2020年にはワイナリーが完成。醸造免許も取得しました。2023年の今年は、独立してから7年目になります(鈴木さん)」。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

上山市という特別な場所で。地域と共に造り上げるワインコミュニティ。

上山市にワイナリーが集まっているのは、テロワールや行政の後押しだけではありません。地域のワインカルチャーを牽引する、先駆的なワイナリーの存在もあるからです。「もともと上山市は欧州系ブドウ栽培の実績があり、老舗の『タケダワイナリー』さんや『ウッディファーム&ワイナリー』さんなどがよい日本ワインを造っていますし、横のつながりや情報交換の機会も多いのです。さらに大手のワイナリーにブドウを供給しているなど、ワイン用ブドウ原料の産地としての歴史があり、栽培農家の技術レベルがとても高い。買いブドウを視野に入れつつ、自社でのブドウ栽培を手がけようと考えていた自分にとっては理想的な場所。さらに、久保手はもともとデラウェアの産地なので、地元のブドウを使えば、耕作放棄地の活用や地域活性化につながるのではないか、と思いました。上山市は、日照時間が長く、ブドウ栽培に適している地。さらに降水量も少なく、雪もそれほど多くない。さらに自社の圃場に関して言えば、ちょっと丘になっていることで風通しがすごく良くて日照時間も長く、水はけもいいんです。自園ではもともとデラウェアが植えられていたほか、ラ・フランスが植わっていたんですが、少しずつワイン用品種の垣根栽培に切り替えました。メインヴィンヤードは標高250Mの小さな丘にあります。南斜面と北斜面があり、北斜面には、ピノ・ノワール、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブランなどの、熟度と酸を重視する品種を植えています。南斜面には、より熟度を高めたいメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンを植えています。土壌は、石混じりの強粘土質土壌。斜面にあるので水はけが良く、独立した丘なので雨以外に水が流れてこないのです。いまのところは品種でいうと、カベルネ・ソーヴィニヨンが最も可能性がありそうだなと思っています。すごく糖度も上がりますし、うちでは栽培もしやすい印象です(鈴木さん)」。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

創業当時の苦しい日々。やっと完成したワインが売れなかったつらさも味わって。

タイミングよく、理想の土地でブドウ栽培を始めることができた鈴木さん。ただし、ここまでの道のりには苦労も多かったそう。「創業当時はまず苗を植えるところからスタートしましたが、人手がないのでほとんど全てを一人やらなくてはならず、地獄の日々でした。しかも新規就農で小屋も農具も何もない所からのスタート。苗木代、垣根資材代、農機具代などお金がかなりかかる上に、当面は収入が見込めない。植えた苗が上手く育つのか、畑と共に借り受けたデラウェアがちゃんと収穫できるのか。最初は委託醸造だったのですが、それで美味しいワインができるのかなど、いろいろ不安がありました。そして、やっとできたワインがあまり売れなかった時が一番苦しかったですね。ワインができるまで、SNS以外の営業活動をしていなくて…。そもそも醸造と栽培しかしたことがなかったので、営業のすべを知りませんでした。現在も営業はわからないですし、難しいですね…。基本は私一人で、仕込み、瓶詰め、収穫などの人手がいるときに義父と実母に手伝いに来てもらって、計3人でやっておりましたが、いよいよ手が回らなくなり…。昨年から妻にも常勤で入ってもらいました。なので、今は常勤が私と妻の2人、それに繁忙期の義父と実母という、4人体制でやっています(鈴木さん)」。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

ブドウの味をそぎ落とさないように、全商品、無濾過で生詰め。すいすい飲めるワインを目指して。

2020年も2021年も、各約2万本分のワインを醸造しました。売るのに苦労した時期があるので、身の丈にあったロット(売れる分)しか造っていません。現在、銘柄の数を減らし、ロットを少しづつ増やしている感じですが、なかなか銘柄数が減らずにいる感じです。なので、少しづつ醸造量が増えていっています。頑張って売らないといけないですね(汗)。あとはブドウの味をそぎ落とさないよう、全商品無濾過で生詰めです。また飲み手が引っかかりなく、ブドウを感じて、すいすい飲めるようにと考えて、醸造過程を選択しています。そのうえで必要最小限の酸化防止剤は使用し、酵母も添加しています(鈴木さん)」。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

ベルウッドヴィンヤードの銘柄は、全部で5種類のシリーズで展開!

「シリーズ(コレクション)は、全部で5種類あります(鈴木さん)」。

・コレクションヴァンペティアン…ブドウの味わいを素直に感じる瓶内発酵のペティアン。
・コレクションクラシック…ブドウの味わいを素直に感じる定番のスティルワイン。
・コレクションスペリオール…厳選したブドウで造るワンランク上のスティルワイン。
・キュヴェデザミ…特に厳選したブドウで造る買いブドウのトップキュヴェ、基本樽熟成。
・ドメーヌクロッシュ…自社ブドウで造るフラッグシップ(予定)。

「ラベルデザインは、弊社を知ってもらう上で名刺代わりになるように、"鈴木"から想起して決めたリバティベルのロゴを大きく入れたり、切手モチーフ(実際にリバティベルの切手がある)にしたりしています。ワインは、その年その年のブドウしだいて、味わいはさまざま。その年にできたワインを、お手紙のように飲み手にお届けしたい…という思いを込めて、デザイナーと時間をかけて考えました。ペティアンのシリーズも、ワイナリー、私、久保手の鷹取山、ブドウをデザインしてもらい、ベルウッドを知ってもらえるようにと考えています(鈴木さん)」。

※左から1番目の画像はイメージです。「Collection Superieure 2021 CH et SB」は完売しました。
※左から2番目の画像はイメージです。「Collection Superieure 2020 Tercet」は完売しました。
※左から3番目の画像はイメージです。「Collection Vin Petillant 2021 Verdelee」は完売しました。

上段左から:
Collection Superieure 2021 CH et SB/SOLD OUT
Collection Superieure 2020 Tercet/SOLD OUT
Collection Vin Petillant 2021 Verdelee/SOLD OUT
Collection Vin Petillant 2021 Muscat Bailey A/2,640yen(税込)
Collection Vin Petillant 2021 Le Pétale/2,970yen(税込)

下段左から:
Collection Classique 2022 Assemblage Rose/2,970yen(税込)
Collection Vin Petillant 2021 Le Pétale/2,970yen(税込)

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら
▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

毎日のテーブルや、ちょっと特別な場面に。ベルウッドのワインが楽しんでもらえたらうれしい!

「毎日の日常のテーブルワインにはコレクションクラシック!ワイワイみんなでBBQのときは、ペティアン!ちょっとだけ特別な日にはスペリオール、とっておきの特別な日にはキュヴェデザミやドメーヌクロッシュ…。どんな場面であれ、ベルウッドのワインが楽しんでもらえたら、嬉しいですね。また上山市は新幹線が通っているし、温泉旅館などもあり、ワイナリーと連携できる観光資源があります。コロナが沈静化した今後は、上山市のイベントも開催される予定ですので、ぜひ参加して、この土地の景色を楽しんでいただきたいです!また『ベルウッドヴィンヤード』としても、これからもっと農業ボランティアさんに参加いただいたり、イベントなどをやっていきたいです!(鈴木さん)」。

▼「山形エリアのアイテムリスト」はこちら

ベルウッドヴィンヤード/BELLWOOD VINEYARD
山形県上山市久保手字久保手:(株)ベルウッドヴィンヤード

栽培醸造家の鈴木智晃(すずきともあき)氏が2020年に山形県上山(かみのやま)市に設立したワイナリー 。山形県朝日町生まれの鈴木氏が、地元のワイナリー「朝日町ワイン」で醸造責任者を務めた後、2017年に独立。山形県上山市久保手地区で新規就農し、ワイナリーの完成までの3年間は委託醸造でワイン製造・販売をおこなってきました。ヴィンヤードのある久保手・裏町地区は上山の西側に位置し、標高は約250m、土壌は石混じりの強めの粘土質が特徴です。ワイナリーに隣接するメインヴィンヤードでは、南向き斜面(カベルネ・ソーヴィニヨン/25a、メルロー/10a)と北向き斜面(ピノ・ノワール/10a、ピノ・グリ/10a、ソーヴィニヨン・ブラン/15a)の小高い丘の上でブドウ栽培をおこなっており、有核デラウェア(10a)の畑は、少し離れた久保手集落の中に位置しています。ヴィンヤードは欧州品種のポテンシャルがあり、デラウェアの産地でもある上山市久保手地区のブドウの魅力を最大限に引き出すワイン造りをおこなっています。

▼「ベルウッドヴィンヤードのアイテムリスト」はこちら

SOLD OUT
SOLD OUT
SOLD OUT
SOLD OUT

ワイン造りの現場にwa-syuが特別インタビュー!
シリーズ・日本ワインが生まれるところ。

日本ワインは人とブドウのストーリーから生まれます。ますます日本ワインが好きになる、そんな素敵なワイナリーを、wa-syuが独自取材でご紹介!

 

▼「ワイナリーリスト」はこちら

日本ワインで、日本をもっと深く知る。
エリア別ワイナリーガイド

日本の感性と職人技を生かした名品が次々と誕生し、国内外の食通を惹きつけながら、進化し続ける日本ワイン。南北に長い日本列島の各地で栽培・収穫されたブドウのみを使用し、日本国内で製造された「日本ワイン」は、その地域の気候や品種によって性質もさまざまで、そのため多様性に富んだ味わいが特徴です。北は北海道、南は九州・沖縄まで。日本全国より、wa-syuが厳選した50以上のワイナリーをエリア別ガイドでご紹介します。

▼「産地リスト」こちら

RELATED ARTICLE

関連記事

2023.05.02

【世界基準の品種で、日本の"今"を知る!クラシックな品種の日本ワイン】 世界基準の定番欧州系品種にチャレンジしている日本ワインをセレクト!日本の"今"の立ち位置を、美味しいクラシックな品種であらためて確認してみては?

2023.03.22

【可能性は無限大!ブレンドワイン、混醸ワイン】 ブドウのポテンシャルをもっと引き出す!技術が光る極上の「ブレンドワイン」や、複数品種を混ぜて醸造する「混醸ワイン」の可能性に注目です

2023.02.22

【ますます進化する、日本の定番。甲州&マスカット・ベーリーA】 日本固有種、甲州とマスカット・ベーリーAはやっぱり奥深い! "結局はここに戻ってくる定番品種"でありながら、その多彩な表情にも驚かされます

TOP